Wedge「見直し迫られる『暗号資産法』喫緊の課題は消費者保護」

目次
コインチェック事件で市場に大きな影響
コインチェック社において暗号資産NEMの顧客資産のアカウントがハッキングにあい、約580億円相当のネムが流出する事件が発生した。
今回の事件は(中略)被害金額も大きく、暗号資産が広範囲に広がっていることもあり、一般社会へのインパクトも大きい。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
市場の成長につれ、ハッカーの能力も格段に上がってきています。
マウントゴックスの経験を活かそうにも、それ以上の技術力を要するため、どの程度の対策が安全レベルなのか未知数であるというのが正直なところでしょう。
投資家の立場であれば、まずそうした 適切な知識を身につけて、リスクを理解することが大切 と言えます。
暗号資産法の見直しが必要不可欠に
マウントゴックス事件を教訓に制定された改正資金決済法、通称「暗号資産法」は、施行1年にも満たないうちに見直しに迫られている。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
法整備に限らず、暗号資産市場の異常な成長によって様々な機関や仕組みが追いついていない現状があります。
それこそコインチェック事件についても、市場が急成長したことによってマルチシグなどの対応が遅れてしまったという経緯があります。
確かに見直しは必要となりますが、 投資家もそうした国家としての裏付けに頼らずに自己責任で投資を楽しむべき かもしれません。
急成長した暗号資産市場と時価総額
大手企業を凌ぐ勢いを見せている暗号資産市場 です。全体の時価総額は約33兆円、1日あたり約3兆円となっている。そのうち、最大の暗号資産はビットコインで、時価総額で全体の約3〜4割を占める。
ピーク時の暗号資産全体の時価総額は、世界の株式時価総額ランキングで見てアップルに次ぐ第2位である。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
ビットコインに関しては、多くの取引所でアルトコインを購入する際の基軸通貨的な役割を果たしているため、これだけの規模となっています。
よほどのブランドスイッチが起こらない限り、このシェアは変わらないでしょう。
欧州三大バブルに似た価格高騰を見せるビットコイン
ビットコインの価格高騰は(中略)一商品の価格高騰であるため、経済全体への影響は相対的に小さく性質は異なる。だが、欧州三大バブルと比べると(中略)よく似た面がある。また欧州三大バブルは、ピーク後、短期間のうちにバブル前の価格まで下落していることから、暗号資産も短期間のうちに価格が急落するリスクを抱えていると言える。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
これに関しては根拠が不十分な主張と言えるでしょう。
この爆発的ブームの裏にはブロックチェーンをはじめとする新システムが評価され、金融業界に革命的な衝撃を与えたという前提があります。
確かに暗号資産市場が高騰しすぎているという見方もできますが、 欧州三大バブルとの比較はあまり意味を持たない のではないでしょうか。
大暴落を招きやすい暗号資産の取引システム
暗号資産の取引額は、レバレッジ取引・先物取引が主導していることも特徴である。
こうした取引は(中略)価格が下落した場合、強制売却や追証を求められることとなり、下げをさらに加速することになる。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
利確暴落というよりは、安定感のない市場においてしばしばニュースなどの影響で起こる暴騰暴落によって簡単にロスカットにかかることがあります。
そしてレンジを形成することが少ないこともあり、プロトレーダーがセオリー通りに直近安値(高値)にロスカット注文を入れていた場合、中長期で見ていた初心者投資家が痛い目を見ることになります。
「誰でも勝てる」という時代はもう終わった のかもしれません。
大口投資家によって支配される相場
大口投資家が大型注文を入れた場合、市場は暴騰暴落を起こします 。ビットコインの保有残高別の投資家分布状況を見ると、10BTC以上保有する投資家は(中略)全体の0.6%しかいないが、ビットコイン全体の9割程度を保有している。1000BTC以上の大口投資家となると約1600人しかいないにもかかわらず、全体の4割を保有している。ビットコインは大口投資家の動きに左右される構造となっている。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
ここで挙げられているのはビットコインの例ですが、ここ1年で暗号資産への投資対象はリップルやイーサリアムなどのアルトコインへと市場参加者の興味が向かっています。
ビットコインですらこのように不安定であるのに、アルトコインであればなおのことです。
そうしたリスクがわかりやすく伝えられている記事ですね。
「暗号資産法」制定の経緯を再確認
暗号資産は「将来性のあるブロックチェーン技術を活用した決済手段」と見做され、いたずらに規制強化することは避け、資金決済法の範疇と捉え、法律が制定された。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
新たな時代の潮流を感じた 日本政府が世界の金融市場を席巻するチャンスと捉えて、いち早く法整備に動いたという説 もあります。
現に日本は暗号資産大国と呼ばれることもあり、この市場を大きくさせてきたとも言われます。
しかしながら、暗号資産はブロックチェーンを活用しているものばかりではなく、暗号資産法の定義は曖昧になっています。
規制の見直しと強化を図るべし
現実の暗号資産は、暗号資産法制定時に想定された状況とは大きく異なり(中略)もっぱら投機の手段と化している。したがって、これだけ大規模な被害が発生した以上、現場を踏まえて、何らかの規制の見直し・強化を図らなければならないだろう。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
市場の成長速度に周りが追いついていないという現状は確かにあります。
規制を見直す一方で、当初の方針であったはずの「 イノベーションの普及を阻害しない 」という前提を守ってほしいという思いもあります。
以下、3点に関して規制を強化するべきと記事では挙げられています。
暗号資産取引所への規制強化
暗号資産の顧客預かり資産は分別管理が義務付けられているが、レバレッジ取引については暗号資産法の対象外であるため、レバレッジ取引に伴う証拠金は分別管理が義務化されていない。そのため、取引所の経営が破綻した場合、証拠金が失われるリスクがある。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
いわゆる通貨として暗号資産を位置付けるなら、従来の FXをサービスとして提供している証券会社が導入している仕組みを利用することが良い のではないでしょうか。
一方で、そうしたカウンターパーティーリスクが発生することを投資家側も理解した上でトレードをしなくてはなりません。
不公正取引防止規制の導入
暗号資産法には、相場操縦やインサイダーといった不公正取引防止のための直接的な規制は規定されていない。暗号資産は有価証券に該当せず、不公正取引防止規定のある金融商品取引法の対象外である。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
株式投資でいうインサイダー取引というのは暗号資産業界で頻繁に行われていると言われています。
これに関してはいずれ規制がかかってくるでしょう。
しかし、単純に有価証券に対するルールを準用するのではなく、 世界基準を鑑みて、独自に法や制度が生まれることに期待 します。
ハッキング被害の際の利用者保護規定
コインチェック社のハッキング被害のようなケースに際して、利用者に損失が発生した場合の補填を規定すべきである。現状はあくまでも補填するかは取引所次第で補償が行われる確証はない。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
当然、このようなサービスがあれば投資家も安心して資金を預けることができます。
しかしながらそうしたカウンターパーティーリスクも含めての投資であり、取引所も一定の基準のもとで運営しているのであればそれも致し方ないという見方もできます。
証券会社に倣うのは一つの手かもしれませんが、今一度 世界を見渡してゼロベースで検討してもらいたい とも思います。
機能していない法律のもとで対策を
もはや暗号資産は暗号資産法が想定していた決済手段としては機能していない。暗号資産への投資に関し、投資金額の上限を設定したり、リスクに耐えうる資産を持つ顧客に限定したりすることも一案である。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
決済が普及していない現実として、利確扱いされることによる税金の問題があります。
国として暗号資産決済を普及させて、本当の意味での暗号資産大国日本を作りたいのなら、 政府主導でそうした税制改革に乗り出すべき でしょう。
それが経済の活性化ももたらすのではないでしょうか。
さらに、投資金額を制限したり、顧客を限定することには賛成できません。
日本人は投資に対して消極的と言われており、いわゆる「買い煽り」に対して賛否はあれど、 投資することへのイメージチェンジを図る良いきっかけになる のではないかとも思えます。
投資家保護も必要である一方、こうした新たな概念を利用して投資に親しみを持ってもらうという意見も捨てたくないところです。
世界規模での規制に動くべきか
暗号資産取引については国境がないため、規制の実効性を高めるためには日本だけでなく全世界ベースで規制しなければならない。(中略)金融商品としての観点から議論され、何らかの結論、規制の方向性が打ち出されることを期待したい。
引用:Wedge
見直し迫られる「暗号資産法」喫緊の課題は消費者保護(2018年2月20日)より
理想論としては良いかもしれませんが、ここまで国によって有価証券や為替取引などに関する規定について足並みが揃っていない現状があります。
国ごとの見解をまとめることが先決でしょう。
文化や習慣の違いによって、政治システムや金融システムは異なります。
暗号資産は確かに全世界共通のものですが、捉え方はまちまち ではないでしょうか。
日本の法整備について詳しく知りたい方はこちら
世界各国の規制について知りたい方はこちら
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