世界の中央銀行が”リーマンショックの悪夢”を再び起こさせないために異例の金融緩和を続けています。
そのため、感覚が麻痺しているかもしれませんが、世相感に対し株価は最悪期を脱したと思われます。
そんな中、あの生ける伝説、ウォーレン・バフェットが株式市場で印象的な行動を起こし、 優良企業であれば永久に保有する彼のポリシーに対し、航空株を全て損切り しました。
今回は彼のコロナウイルス(COVID-19)後の考えをシェアできればと思います。
損切りの潔さ
米資産家で著名投資家のウォーレン・バフェット氏は2日、自身の率いる投資・保険会社バークシャー・ハサウェイが、保有していたデルタ航空とサウスウエスト航空、アメリカン航空グループ、ユナイテッド・エアラインズ・ホールディングスの株式を全て手放したことを明らかにした。
バークシャーは4月に計65億ドル(約6950億円)相当の株式を手放したが、その大半がこれら米4大航空会社のものだった。バフェット氏は過去にUSエアウェイズ(当時)への投資で痛手を負った後、業界への投資を控える意向を示したが、2016年に再び株式保有に動いた経緯がある。
2020/5/03 Bloomberg「バークシャー、米4大航空会社の株式全て売却-バフェット氏明かす」
航空株だけで約7,000億円の損切り。
この記事の通りですが、一言で言えば凄まじいですね、、、
バフェットルール
バフェットは莫大な資産を築いたにも関わらず質素な暮らしをしていることで有名で、チェリーコークを愛し(1日5本以上!)、VWの普通車を20年以上乗り潰していたことも有名ですね。
そんなバフェットですが彼の信条は【アメリカほど洗練された資本主義の国はない】です。
その思想をもとに、
①自分が理解できるビジネスモデルしか買わない ②資本主義が続く限りは成長 = 余程のことがない限り保有し続ける ③ワイドモート(城のお堀のような強固な参入障壁)を持つ企業を買う ④キャッシュフローマージンを高く維持している企業を買う ⑤本業の潜在的価値と現在価値が市場価値より上回っている時にしか買わないと、グレアムから受け継いだバリュー投資の王道を邁進しています。
ポリシーからの逸脱
バリュー投資の生ける伝説、ウォーレン・バフェットが編み出したバフェット指数でも高水準だったアメリカの株価。
今回のコロナ禍でバーゲンセールと彼は判断しましたが、バーゲンではなく【世界の変化】によるものと理解した彼はすぐさま全て損切りしました。
バフェット指数とは言わば熱狂指数で、下記のシンプルな数式で導き出される推移を各投資家は追っています。
バフェット指数=全上場企業の時価総額÷名目GDP×100
この指数でも2020年初頭は150%と過熱気味だったので航空株は押し目買いのチャンス!となった訳ですね。
ただ、実際に起ったことは世界中の大都市での都市封鎖や渡航制限。
その煽りを受け、4月の米国航空旅客数は前年比96%減だったそうです。
現実的に【需要が蒸発】した状況から、3~4年後に航空会社がどの程度生き残っているのかの予測も不確実性が伴い、また破産、国有化 となると債権者や株主にも何らかの責任や損失が発生する。
COVID-19の影響が想定よりも多く、彼のポリシーに反するほどまでになったということが伺えます。
万物は流転する
今回バフェットが損切りを行った航空4社(デルタ、アメリカン、サウスウェスト、ユナイテッド)の内、デルタとサウスウェストはバリュー投資でも狙えるような業績や配当を叩き出していました。
サウスウェストはリーマンショックでも減配しなかった実績、デルタは増配基調。
ビジネスの稼ぐ力を示していると言われている営業キャッシュフローマージンでも全社とも上昇傾向。
理論的には正しい判断でしたが、結果としてウイルスには勝てず、損切り。
バークシャーは様々な企業を傘下に置くコングロマリットで、保険業が絶好調。
2020年第1四半期でもきちんと利益を出しているのは流石ですが、自分のポリシーに固執していたら、更に損失を拡大し、バークシャーの業績に更にダメージを与えたかもしれません。
私達が今回、学ぶべきことは、不確実性のある今回の災禍では、身軽に柔軟に判断を修正しておかないと火傷をするということです。不確実性が増している状況では、キャッシュを手厚くし、勉強に勤しむなどの王道に徹したほうが長期的なリターンはいいのかもしれませんね。
それでは!
この記事を書いた人
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東証一部上場企業で会社員として働くも、趣味の業界であるため、ストレスフリーで過ごす。 ファンダメンタル分析をベースに長年相場で戦い、経済的なストレスからも解放され、ストレスフリー。市場平均は常に超えてます。 社畜を軽蔑していることからか、辛口コメントなのがタマにキズ。
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