こんばんは。金崎明人です。
すっかり秋の様相を呈してきましたね。
今日は先月から様子を見ていた中国の恒大集団(エバーグランデ)によるバブル崩壊?の話をシェアしたいと思います。
キャッチーな言葉に惑わされがちですが、冷静な目線で物事を見ていきたいですね。
恒大集団は結局持ちこたえられず?
2021年10月、経営危機が叫ばれていた、中国恒大集団の破綻は確定した。負債総額は1兆9700億人民元(約33兆5,000億円)と見られている。中国政府は直接救済を見送り、間接的な部分的救済にとどまる見通しだ。9月30日に償還期日を迎えた個人投資家向け債権は、10%の金額を返金したと会社側は発表したが詳細は非公表だった。
Global News Asia 中国不動産バブル確実に崩壊「経営危機の中国恒大集団、破綻へ」 より
中国不動産業界において、2位の中国恒大集団は多額の借入金を基にしたレバレッジを活かし、スピード感をもって事業を発展、多角化させてきました。
そんな恒大集団(以下、恒大)でしたが、21年8月あたりから資金繰りが怪しいという報道がなされるようになってきました。
中国には土地の所有権が法人や個人になく、政府から借りている、という法的スキームを持っていたため、「政府が最後は救済するだろう」という楽観論が大勢でしたが、それがどうやら政府は救済しないという報道が増えるや否や、一気に株価にも影響を及ぼし、昨今のバブル崩壊?リーマンショック再来?とまで言われるような状態になってしまいました。
売上高7兆円を誇り、負債総額は推定で33兆円、株価はここ5年で十分の一と、中華らしいダイナミックな規模で、何らかの影響があるのは間違いありません。
ただ、それがリーマンショッククラスなのか、日本のバブル崩壊クラスなのか、それとも一時的な調整なのか。
執筆時点ではまだ影響の範囲が見えてきませんが、金崎明人が個人的に考える見解をここでシェアしたいと思います。(投資は自己責任でお願いします)
実体経済には影響少?
恒大は創業者の許家印 が裸一貫で大きくした企業であり、マンション開発を軸に中国の不動産市場拡大の勢いに乗り、EV事業や老人ホーム事業、食品販売事業や観光業など「あれもこれも」と多角化戦略を取ってきました。
サッカー好きの方には「広州恒大」というチームで有名ですが、これも恒大が保有する(現在はアリババと共同保有)サッカーチームです。
ちなみに海外サッカーの広告は漢字ばかりで、本当に世界に打って出ようとする企業がどんどん中国から出てきているなぁという感じが毎年強くなっていますね。
そんなイケイケの恒大でしたが、コロナ禍で歯車が狂ってきてしまいました。
統計の信頼性は置いておいて、コロナ禍から立ち直り、経済活動を急ピッチで再開させている中国も、他国と同様に大規模な金融緩和を実施しました。
金融緩和が行われるということは、世の中にある通貨供給量が増え、銀行の融資も増え、余ったお金が株や不動産に回り、良くも悪くも資産高(資産効果)による経済の好循環が期待されます。
中国の場合は不動産に多くの資金が回り、不動産価格の高騰が続き市民からの不満も日に日に高まっていました。
最近の習近平政権は明確に資本主義体制とは距離を置き、強権的に格差是正を進めているため、市民の不満を抑え込もうと、ついに不動産業界にも介入してきました。
それはある意味、かなりハンドリングの難しい荒業ですが、借入規制を相次いで強化し、IT業界や教育産業に課した規制のように「国民の不満」を逸らそうと躍起になった政府の姿勢が伺えます。
そのため、当然ではありますが、借入金でスピード感をもって拡大(レバレッジですね)してきた恒大にとっては大打撃となりました。
恒大は銀行から借入金を増やすことができなくなり、過去の借入金の利払いも重くのしかかり、資産の切り売りに手を付けるしかない状況にまで追い込まれました。
現時点では日米欧の金融機関や機関投資家が恒大の株や債権を保有しているものの、規模的にはそこまで大きくないため、リーマンショックのような世界的なショックにはならないだろうと推測されています。
今回の事象はリーマンショックよりも日本のバブル崩壊に構造的に似ているので、そこを押さえていた方がより予測精度向上や仮説構築に役立つので、日本のバブル崩壊のおさらいをしたいと思います。
日本のバブル崩壊は急激な締め上げ
日本のバブル崩壊の歴史を解説するとそれだけで一つの記事になりますが、バブルが発生した原因はやはり「通貨供給量の急激な増加」で、バブルが崩壊した理由は「政府と中央銀行の引き締め」によるものです。
当時、アメリカの巨額赤字によるドル安を救うために西側諸国が為替介入を実施した結果、日本は円高不況に陥り、それを解決する手段として、政府の公共事業拡大と日銀の金融緩和が両輪で行われました。
政府や中央銀行がお金の供給量を増やしたものなので、過剰となったお金が株や不動産への投資に用いられ、買いが買いを呼ぶ展開となり、バブル経済が形成されました。
日経平均株価は1985年12月では1万1千円台だったのに、1989年12月には3万8,900円に達し、令和のこの時代でもバブル期の日経平均株価の高値は未だに更新されていません。
また、不動産価格も高騰し、東京23区の土地価格だけでアメリカ全土が買えると言われるほど、不動産価格が増大しました。
不動産価格も倍増は当たり前という実態経済と大きく乖離した、まさしく泡のような状態だった訳ですね。
当時の日本も、実体経済との乖離が後戻りができない程になっていたため、突如として投機の抑制、金融引き締め、金利の引き上げと政府、日本銀行が引き締め策を実行しました。
特に影響が大きかったのが投資の総量規制で、レバレッジを効かせていた好循環が一気に逆回転し、借金返済のために人々は保有している株や不動産を手放し、株価や不動産価格が暴落しました。
銀行も担保で保有していた資産価格が下がることで、一気に融資を絞り、日本経済に流れるお金の流れがいきなり絞られ、日本の長期低迷を招いてしまいました。
日本のバブル経済崩壊から欧米諸国は学び、金融引き締め時も現在のFRB議長パウエル氏のように何回も何回も時間をかけ市場とコミュニケーションを取り、緩やかに金融引き締めを行うスタイルに変わっていきました。
中国も日本のバブル崩壊を相当に研究したと言われているので、急激な締め上げはしないはず、と思われていましたがそれ以上に市民の不満を政府が重く受け止めた、ということの証明になるのかもしれませんね。
今回の恒大騒動はカネ余りの不動産融資規制の締め付けという点で日本のバブル崩壊に近いと金崎明人は考えています。
落ち着いて構造を見てみること
一部ではリーマンショッククラス!という意見もありますが、リーマンショックは金融派生商品のデフォルトの連鎖による金融機関の倒産危機が引き起こした信用収縮なので、言わば「川上」から引き起こされたショックです。
今回のような不動産という実物資産の「川下」が引き起こすショックは影響は小さくないものの、範囲は限られますのでリーマンショッククラスにはならないとの持論があります。
当然、リーマンショック後、金融機関に対する資本規制も強化され、リーマンショックのようにどんどんと世界中の金融機関に飛び火する、というような可能性は非常に低く、また中国は他の国とは違う統治体制なので、常識では考えられないような介入方法を今後してくるかもしれません。
また恒大が保有する不動産の価格が暴落することで当然、銀行の担保価値も下がり銀行が貸し渋りをする可能性は非常に高いですが、中央政府、または地方政府の介入で恒大の破たんを軟着陸させようとする動きが出てくると推測しています。
あくまで仮説に過ぎませんが、中国はまだ政府の借金という点ではまだ余力もありますし、事前に金融機関に対し政府が警告を行ってきているので今回の恒大騒動はイチ企業の破たんに落ち着くと考えています。
より心配なのが、中国の電力不足の話であったり、もうすぐ突入すると言われている少子高齢化社会の話の方が中国の成長率を鈍化させるという意味で深刻だと思っています。
長期投資家にとってようやく来た調整とポジティブな意見も見受けられますが、年末にかけアメリカ債務問題も再燃しているので個人的には、Do nothing というのも年内までの一つの戦略オプションで、この時期は自己投資の方がリターンが良かったと言える日が来るのかもしれません。
あくまで投資は自己責任でお願いしますが、もし万が一、恒大のように債務問題を抱えている企業が連発してしまうとさすがにイチ企業レベルのショックは流石に超えてしまう懸念があります。
そこは当事者しか分かりませんので他人、ましてや他国の住人である私たちが知れる訳がありません。
だからこそ、常にPlan Bを持っておき、一本足打法にならないようにせねばならないと金崎明人は考えています。
以上、金崎明人がお送り致しました。
この記事を書いた人
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東証一部上場企業で会社員として働くも、趣味の業界であるため、ストレスフリーで過ごす。 ファンダメンタル分析をベースに長年相場で戦い、経済的なストレスからも解放され、ストレスフリー。市場平均は常に超えてます。 社畜を軽蔑していることからか、辛口コメントなのがタマにキズ。
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