現在、コロナ禍でかつてない程の財政出動を行った反動が出てきています。
その中で、ポストコロナを見越した動きがまた見られました。
世界中の政府はグローバル化した経済活動にどうアジャストしていくのでしょうか。
G7、各国共通の法人税は最低税率「15%以上」合意 グローバル企業を視野に
ロンドンで開かれていたG7(主要7カ国)の財務相会合で5日、各国はグローバル企業への課税強化を視野に入れた「歴史的」な合意に達した。企業が商取引で実際に利益を得ている現地で納税するよう制度を作るほか、法人税に各国共通の最低税率を定める方針。
G7各国は、法人税15%以上を目指すことで一致した。世界各国の法人税引き下げ競争に歯止めをかけようとするもので、実現すればハイテク大手の米アマゾンや米フェイスブックなどが影響を受ける可能性が高い。
2021/6/6 BBCNEWS(Wedge infinity) G7、各国共通の法人税は最低税率「15%以上」合意 グローバル企業を視野に より
グローバル化経済の歪を埋めていくフェーズに
「通勤通学でさくっと学べる」をコンセプトにしていますので、簡単に解説します。
現在、コロナ禍で大規模な財政支出を行った政府が今まで手を付けられなかった「聖域」に「コロナ禍で潤った巨大IT企業はけしからん」という民意を得て、ようやくメスを入れようとしています。
少し前のパナマ文章でも問題になりましたが、売上の実態がある国で課税されず、法人税が安い国に本社の籍を置き課税金額を圧縮していたグローバル企業が多々ありました。
勿論、これは脱税ではなく節税で合法なのですが、今回のコロナ禍で税収を確保したい先進国がついに牙を向け始めた訳です。
人間は合理的な存在ではなく、情緒的で非合理的な生き物。
もちろん政府も選挙に勝たないと意味がないので、民意の反映は最大限考慮しなければなりません。
今までタックスヘイブン(租税回避地)として使われてきた国々はたまったものではありませんが、それらの国は国土も総じて小さく、主要産業が金融しかないので世界的な大国連合であるG7が課したルールであれば全面拒否とはいきません。
G7での合意がG20に引き継がれここでも大枠合意となると、このグローバル化経済の歪を埋めていく速度はどんどんと加速していくでしょう。
日本でも日本支店ではなく、イチ倉庫扱いで法人税を最小にしてきた某大手ECサイトや大手会員制スーパーも、勿論影響を受けます。
逆に日本企業で海外に進出している企業は製造業や小売、サービス業が大半で、欧米ほどテクニカルな節税はしていないので影響はそこまで大きくないでしょう。
金融課税強化「検討課題に」 経財相
西村康稔経済財政・再生相は4日の記者会見で、高所得者への金融課税の強化について「今後の検討課題の一つだ」と述べた。米国など海外で議論されている富裕層への課税強化を引き合いに「短期間で決着させるのは難しいが、中長期的な課題として検討している。
2021/6/5 日本経済新聞電子版 金融課税強化「検討課題に」経財相 より
経財相の発言は、前日に金融庁が公開した「金融所得課税の一体化に関する研究会」という意見交換会の議事録の内容に関連しています。
仮想通貨(暗号資産)の税制への言及は無かったようで、そこは残念ですが、主にデリバティブ取引の損益通算に関する意見が大半だったようで、その中で時価評価課税も検討されていると報道があり、ある意味バズってしまったと思われます。
見出しに要注意!
公表された資料に一度、目を通すと見出しのようなセンセーショナルな記載ではなく実際は、金融所得課税の一体化の中で出てきた一意見という扱いでした。
金融庁は同じカテゴリに分類される金融商品間で、損益通算を認めることで課税の公平性・中立性を図り、投資家にとって分かりやすい税制を目指すということをしきりに強調していました。
なので、強引にデリバティブ取引で時価評価課税を課すんだ!と言っている訳では無いのが要注意ですね。
ただ、デリバティブ取引で両建てを行い、期末に損出しを行い、意図的に節税を操作的に行うというのは租税回避行為にあたり現状のままではいけないのでは?と釘を刺したのも見逃せません。
世界的にグローバル化経済の歪を埋めていくトレンドが形成された中で、日本の税制も海外の例に倣って変わっていくことが予想されるので、私たちが今できることは、現状の把握とPlan Bの想定くらいしかないのが現状ですね。
公平性とは?
一般論では、日本の場合、給与所得や事業所得は所得額に応じて課税の割合が変わりますが、株式投資の場合は20.3%での一律課税。
ここが「労働者階級が資本家階級よりも条件が悪い」と言われる所以ですが、公平性を謳っている金融庁の観点から、この税率もいつかは見直しが行われそうな気がしてなりません。
ただ、税制「改悪」を行うと株式市場へ未だかつてない影響を及ぼすのは目に見えているので、現在は棚上げ状態になっている状態だと金崎明人は考えます。
冒頭の公平性とは何?という問いに対する明確な解は見出せませんが、「結果の平等ではなく機会の平等」は必ず担保して欲しいものです。
おそらく、大規模金融緩和で潤っている株式市場への課税強化は、大衆からすると「歓迎」されると思われますが、それも民主主義のルールに則ったものであれば、ある程度は尊重するしかありません。
課税強化により、恵まれない子供たちへの支援等の輪が広がるのであれば、個人では損だけど、社会全体ではプラスが大きいという本来のあるべき姿になるのかもしれませんね。
私は政府の方針がどうこうよりも、変化に対応し生き抜く力を養いたいと思います。
以上、金崎明人がお送り致しました。
この記事を書いた人
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東証一部上場企業で会社員として働くも、趣味の業界であるため、ストレスフリーで過ごす。 ファンダメンタル分析をベースに長年相場で戦い、経済的なストレスからも解放され、ストレスフリー。市場平均は常に超えてます。 社畜を軽蔑していることからか、辛口コメントなのがタマにキズ。
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