新型コロナウイルスの拡大が各地で進んでいます。経済を止めないために”正しく恐れる”方針に舵を切った日本。やるべきことはやっていきましょう。
そんな中、世界のマーケットは世の中のありとあらゆる思惑を反映し、典型的な価値の尺度を示す金で大きなニュースがありました。
金・ビットコインに資金流入 法定通貨への不信背景に
貴金属の金と暗号資産(仮想通貨)のビットコインがともに急騰している。金は年初来で3割、ビットコインは5割上昇した。両者に共通するのは通貨に似た性質を持つが、特定の発行国を持たない「無国籍」である点だ。両者の上昇は、米ドルをはじめとする法定通貨への不信感を映す。
2020/7/28 日経新聞電子版 金・ビットコインに資金流入 法定通貨への不信背景に より
通貨価値が希薄化されている?
先ほどの記事にもあるようにドルの金利が低下して、通貨の魅力が減っていることが指摘されていました。
簡単な経済のお勉強の復習ですが、金利は経済の”体温”を示すようなものとしてよく例えられます。
不景気時⇒中央銀行の政策で金利を下げ、信用創造の仕組みを活用し、市中に資金を回りやすくさせる
好景気時⇒金利を上げることにより、市中での資金の回転速度を落とし、経済活動を調整する
信用創造や金利をコントロールするための政策を書きだすと枚挙に暇がありませんが、景気が好調過ぎて物価が急激に上昇する状態も、物価下落に歯止めがかからない状態も、両方、安定的な経済成長にはマイナスです。
人間に例えると、高温過ぎても、低体温過ぎても生命活動に支障が出るという状態ですね。
世界の基軸通貨であるドルを持つアメリカ は経済をこれ以上悪化させまいと、中央銀行であるFRBと政府で様々な策を講じています。
■FRB
・政策金利を0.00~0.25%に維持
・米国債の購入
・高利回り債やローン担保証券、商業用不動産ローン担保証券の買い入れ
■米国政府
・現金給付
・中小企業救済支援(ローンや賃金の支払い支援)
記述するとものすごいシンプルですが、米国政府の支援策は総額220兆円、FRBの供給額も250兆円と、アメリカのGDPの2割近くとなる、凄まじい規模のドル供給となっています。
これほどの規模でドルを供給されると、さすがに数量に限りのある金やビットコインの価格は上昇しますよね。
先行き不透明感が拭えないということが第一の理由ですが、ドルの供給量が増え相対的に金やビットコインのドル換算での価値が上昇したという理由も見逃してはいけません。
日本は以前から太っ腹?
このように書くとアメリカすげぇ、日本だめだ!というよくある感想になってしまいますが、日本は世界的に見てもコロナウイルスを抑え込んでいる数少ない国です。
国民一人一人の教育水準が行き届いており、衛生観念も高い。医療体制も整っており国民皆保険制度。
そして政府の言うことには比較的従順に従い、相互監視をする国民性。
批判された学校の一斉休校やアベノマスク配布も初動対応としては効果的で、世間が言うほど酷い対応をした訳ではありません。
GOTOキャンペーンも旅客、観光業界の惨状を見ると”理解は”できます。
死者数が圧倒的に少ないことから、「命あっての物種」なので、生き残ればまた経済活動も行えます。
そのような観点からも日本は今のところ感染者数は得てはいるものの、比較的マシというレベルと断言して良いでしょう。
そんな日本ですが、コロナ禍以前から中央銀行では下記の施策を実施していました。いわゆる、量的質的緩和の枠組みというものですね。
■日本銀行
・政策金利を短期マイナス0.1%、長期は0%”程度”に維持
・国債の購入
・指数連動型上場投資信託(ETF)、不動産投資信託(J-REIT)、社債の買い入れ
また日本政府でも、特別定額給付金や持続化給付金、雇用調整助成金、各種補助金 の支援を行っており、日本銀行で110兆円、政府の施策で230兆円と中々の規模となっています。
ただ、皆様ご存知のように、日本政府の高膨れしている借金もさることながら、日本銀行がETFを経由するというスキームですが、「上場株式の購入」という非伝統的な力業を実施してしまっています。
この緩和策はリスクを伴うもので、現時点でアメリカのFRBは株式購入まで至っていません。
換言すると、「政策余力」があるのは日本よりもアメリカ、となる訳ですね。
通貨だけではダメな時代に
アメリカも日本もどの国もお金の供給量を増やしているので為替の変動はそこまでボラティリティのあるものではありませんでしたが、最近はドル安が目立つようになってきました。
材料視されているのは、第2派による経済再開の遅れ、米中関係悪化、給付金の終了 とされています。
そのために相対的にドルの魅力が落ち、円が上がっているというのが最近のトレンドです。
ただ、ここまでシェアしてきたように、ありとあらゆる政策で通貨を供給している状況に変わりはありません。
それは何を意味するかというと、 通貨価値の下落 です。
戦後日本でも経験したように通貨の価値が短期間で激変する。
そんなことはまずないと思われますが、通貨だけを持っていても、今のトレンドでは価値が目減りする方向にベットしたという意味になります。
保全という意味では金、銀、ビットコイン。
インフレに強いとされるものでは、不動産や株といった資産の購入が対策となりますが、資産形成途中にある方は、色んな領域に分散しても効果が薄まるのでリスク許容度に合わせ、選択と集中をすべきかと私は思います。
私の場合は、ポートフォリオでアメリカ株の割合をどんどん増やしており、リバランスをしています。
ビットコインや金価格上昇のニュースを見た際には今回の背景も思い起こして頂ければ幸いですね。
以上、金崎明人がお送り致しました。
この記事を書いた人
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東証一部上場企業で会社員として働くも、趣味の業界であるため、ストレスフリーで過ごす。 ファンダメンタル分析をベースに長年相場で戦い、経済的なストレスからも解放され、ストレスフリー。市場平均は常に超えてます。 社畜を軽蔑していることからか、辛口コメントなのがタマにキズ。
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