2021年。まだ一か月しか経っていませんが、個人的には資本主義のあり方が変わりつつあると感じざるを得ない出来事がどんどんと起き、この時代に生きていて本当に良かったと思えることすらあります。
今回はかなりこちらの界隈で賑わっているニュースをピックアップし、簡単に解説したいと思います!
NY株620$安、J&J治験結果を嫌気 ゲームストップ68%急騰
J&Jは3.6%安で、ダウ平均やS&P総合500種指数を下押しした。同社は開発中の新型コロナウイルスワクチンについて、有効性が66%だったと発表。米ファイザー・独ビオンテック製や米モデルナ製ワクチンが示した95%程度の予防効果と比較して見劣りする結果となった。
こうした中、この日はビデオゲーム販売のゲームストップなどへの個人投資家の買いが復活し、ヘッジファンドなどの売り方が踏み上げられる「ショートスクイーズ」への懸念も再燃した。
2021/1/30 ロイター通信 NY株620ドル安、J&J治験結果を嫌気 ゲームストップ68%急騰 より
ロビンフッダーの逆襲!
色々と調べると出てきますが、「通勤通学でさくっと学べる」をコンセプトにしている金崎明人が簡単に今回の騒動を解説したいと思います。
・アメリカ人は金融資産の半分を株式や投資信託、債券に投資している(現金保有率は低い)
・スマホで簡単に取引ができ、手数料無料の投資アプリ「ロビンフッド」が若年層中心に拡大している
・アメリカの学費や住宅価格は高騰し、格差がどんどんと拡大している
・GAFA等のハイテク企業が好業績な一方、コロナ禍で多くの労働者が大打撃を受けている
このような「沸々とした」フラストレーションが溜まっている状況で、人気投稿サイトRedditやSNSアプリDiscordで「マネーゲームをして儲けているヘッジファンド達を懲らしめようや」というムーブメントが起き、普通の投資家には見向きもされなかった小売店のゲームストップ株を舞台にマネーゲームが繰り広げられました。
ゲームストップは日本で言うゲオのような実店舗を中心とするゲーム販売の小売店で、はっきり言うと衰退産業でもあり、これから成長するというストーリーや明るい業績見通しがあるとは言えないような企業でした。
そんなゲームストップ株を個人投資家が買い支え、株価を吊り上げ、テクニカル的にもファンダメンタル的にも一度調整が来るだろと予想したプロのヘッジファンドに数千億円もの損害を与えたというのが今回の騒動です。
飛び火は政界にも?
この騒動だけであれば一過性のニュースで終わりそうでもありますが、今回は政界にも飛び火しそうな勢いとなっています。
ヘッジファンドに大損害を与えた後、投資アプリ「ロビンフッド」が突如、ユーザーを裏切り「相場の異常な過熱を防ぐため」と称して、何種類かの個人投資家が買い支えていた株式の購入に制限をかけました。
これに当然、怒り狂ったのは「ロビンフッター」達でした。
そもそも、ロビンフッドが人気を博したのは「株式市場を民主化する」を旗印に手数料無料で、「私たちはウォール街の欲深い奴たちとは違う」というコンセプトを打ち出していたからでした。
そんなロビンフッドが、「敵としていた」側に立ったのか!よく調べるとロビンフッドの株主にヘッジファンドがいたじゃないか!なぜ奴らだけ税金でいつも救済されるのだ!、奴らと同じことをしたまでだ!と怒りの炎が連鎖、拡大し現在では集団訴訟の準備が行われるなど、大きな問題となってきました。
SEC(証券取引委員会)もここ最近のマネーゲーム相場に危機感を覚え「適切な監視を継続する」とわざわざ警告を発したり、左派で金融業界に対し厳しい規制を求めていることで有名な民主党のウォーレン議員も動きだしたりと、アメリカの中で大きな社会問題になりつつある状況です。
ウォーレン氏は最近の株価乱高下はSECが目指す「公平で秩序だった効率的な」市場機能を妨げると指摘した。個人投資家がSNS(交流サイト)で結託し、特定の投資家を攻撃するのは相場操縦にあたるとも指摘。こうした投資家の利益は「経済全体の利益につながらない」と批判する。
日経新聞電子版 2021/1/30 ウォーレン議員、米証取委に質問状 株価乱高下に懸念 より
ゲームストップ事件は不可避だった
下のチャートはゲームストップの株価チャート(Investing.comから作成)でこの上がり方は「異常なもの」であるというのがすぐに分かるかと思います。通常ならショート(空売り)のポジションを取るのがセオリーです。
今回のゲームストップ事件ではセオリーを守ったプロがアマチュア投資家軍団に敗れ、キャッシュ確保のためにS&P500指数やダウ平均にも影響を与えたという例を見ない事象が起きました。
ただこの事象は、2011年に起きた反格差運動の「Occupy wall street」事件や若年層に広がる超左派のサンダース議員人気に通ずるものがあると私は考えています。
日本以上に格差が広がり、多額の学生ローンを抱え「社会に出た時点で苦しい」アメリカの大勢の労働者にとって、今の資本主義はどう映るでしょうか?
富めるものが富み、富める者のためにルールが作られている世の中。
そう感じている若者が多いからこそ、極端なトランプ元大統領やサンダース議員に人気が出、「今のままではもうだめだ」という今の資本主義のあり方を疑問視している声がどんどんと広がっています。
バイデン新政権は当然、こういった声をある程度拾うと予想されることから、バイデン政権下ではある程度格差の是正を進めるということにフォーカスされ、金融業界に対しては「簡単にはいかない」状況が続くと思われます。
バブルはいつかははじけるもの
コロナ禍で世界中の中央銀行と政府はリーマンショック時を超える金融緩和を行い、株価は実体経済と大きくかけ離れていることから、一部ではバブルの終わりが意識され始めています。
私は今の長期金利や主要企業の業績実績から、大胆な金融規制が無い限り、調整はあれど、バブル崩壊クラスの大きな株価下落は無いと考えています。(投資は自己責任でお願いします)
既存の資本主義の仕組みに疑問を抱く人が増え、Bitcoinなどの暗号資産にも資金が流入している今、新時代の幕開けが来そうな予感がしています。あのイーロン・マスク氏もBitcoinにポジティブな意見を示したことから、既存の金融システムが変わりつつある状況に入っているのかもしれませんね。
世の中に絶対は無いということを私たちは様々な出来事から学んだので、何事もリスクヘッジ、Plan Bを考え「変化に柔軟に生き抜く力」を養わないといけませんね。
以上、金崎明人がお送り致しました。
この記事を書いた人
-
東証一部上場企業で会社員として働くも、趣味の業界であるため、ストレスフリーで過ごす。 ファンダメンタル分析をベースに長年相場で戦い、経済的なストレスからも解放され、ストレスフリー。市場平均は常に超えてます。 社畜を軽蔑していることからか、辛口コメントなのがタマにキズ。
▶︎Twitter
最新の投稿
- ゲストレポート2022年7月16日構造上避けられない円安。あなたの生活防衛は?
- 金﨑明人2022年6月11日2022年で見えてきた投資戦略
- 金﨑明人2021年10月8日盛者必衰の理を表す?~恒大集団から学ぶ~
- 金﨑明人2021年8月20日GAFAが次に手を出す領域は暗号資産?