STOとは?
https://youtu.be/oHkspZEokY4
STO(Security Token Offering)は、ブロックチェーン上で発行されるトークン化された証券です。
STOは政府機関に正式に発行・販売が認められたトークンで、ブロックチェーンを介して自由に取引を行うことができます。 従来のICO(Initial Coin Offering)に代わる新たな資金調達の方法です。
このSTOでは、株や債券などといった「有価証券」と同等の法規制が適用されている「セキュリティトークン(Security Token)」を用いて資金調達をおこないます。
STOは投資契約の効力を持っており、主に証券、債券、不動産投資信託(リート)などをトークン化したものになります。STOは、ブロックチェーン上のデータと照合し所有権を証明することができます。
証券法に依拠するトークンであり、規制当局の監視対象となっています。
STOトークン
STOはさらに一歩進んで、証券のステータスに該当するトークンを配布します。
STOは、株式、債券、不動産投資信託(リート)またはその他のファンドのような方法で、基礎となる投資資産と同じように扱われます。
そのため、セキュリティトークンオファリングは証券を配布します。
これらは、 資産または会社の一部のように、貨幣価値が付加された、交換可能で交渉可能な金融商品であるトークンです。
セキュリティトークンは、通常のトークン交換では取引されません。セキュリティトークントレーディングを提供する取引所は、トークンリスト、データ共有、投資家のオンボーディング手順(登録・利用させてもらう手順)に関する広範な調査など、規制を完全に遵守する必要があります。
したがって、セキュリティトークンは専門的な取引所で取引されます。 STOは投資性の高さから、発行から販売に至るまでクリアしなければならないコンプライアンスが多く、政府機関による厳しい審査を通らなければなりません。
STOの審査基準
STOは審査基準がかなり厳しいとされていますが、実際どのような審査基準なのでしょうか。
STOは、金融商品の1つとして法規制に則って行われます。例えば、アメリカであれば米国証券取引委員会(SEC)、シンガポールであればシンガポール金融管理局(MAS)が設けているレギュレーション(規則)に従って審査されます。 しかしその分、STOを実施するための運営者の負担は、従来のICOと比べると非常に重くなります。
旧来の株や債券と同等の金融商品と見做されるため、対処すべき手続きや資格要件、内部統制や監査などの体制の構築、投資家への情報開示等が求められます。
米国証券取引委員会
米国証券取引委員会(SEC)とは、SEC(Securities and Exchange Surveillance Commission)は、
①投資家の保護、
②投資家の資本形成の促進、
③健全な市場の維持
の3つを目的として証券取引を監督・監視する米国の連邦政府機関です。
SECは、1929年の世界恐慌に対する政策の中で、株式市場を監視し預金保険制度を含む銀行制度を改革する目的で誕生しました。 SECは証券取引の法規を管理しており、企業の不正会計やインサイダー取引などを防止するために活動しています。
また、SECは、米国の大統領によって任命された4人の委員と1人の委員長によって構成されており、党派性とならないようにバランスが取られています。
STOとICOの違い
参加者制限
従来のICOでは、トークンの購入ができる参加者に制限が無い場合がほとんどでした。
しかし、STOの場合は基本的に年収20万ドル(約2,200万円)以上、もしくは資産が 100万ドル(約1億1,100万円)以上あるような「適格機関投資家」に限定されたプロジェクトがほとんどで、 トークンを購入できる参加者の範囲は限定的とされています。誰でも投資できるというわけではありません。
「適格機関投資家」とは有価証券に対する投資に係る専門的知識及び経験を有する者として内閣府令で定める者」(金商法2条3項1号)。
「アマ」である一般投資家に対して「プロ」とも通称される。
本人確認
ICOでは基本的にKYC(本人確認)が必須とされていませんでしたが、STOではKYCが必須となっています。
数多くのチェック項目や、様々な個人情報の記載、本人確認書類の提出など作業が続くのが特徴で、少し時間がかかってしまうこともあります。近年ではアメリカの外国口座税務コンプライアンス法(通称FATCA)の制定など新しい規制の影響もあり、以前に比べさらに口座開設時のチェック項目が増え、よりKYCを複雑にしている。
そもそも証券取引を業務としておこなう銀行や証券会社などの金融機関は、資金の流れや自社で抱える顧客の性質を予め把握する必要があるため、顧客に対してKYCが行われるのが必須とされています。どんなユーザーが取引をするのか確認するために行われます。
ICOはKYCが行われずに購入できる場合もあります、しかし、STOによってセキュリティトークンを投資家に販売する際はこうしたKYCが必須となるので、反社会勢力の人たちや不正購入をしようとすることができません。
法規制
ICOの場合、まだ明確な法規制が整備されていない国も多く、その規制やルールが曖昧な為に実質的に規制が無いような状態でトークンの発行や取引がおこなわれていました。
しかし、STOの場合は各国の証券取引委員会や金融庁等の下で監視されるようになり、金融商品取引法に準拠したトークンの発行や取引がおこなわれるようになります。
よって、STOはICOと比べて資金調達の手軽さは排除されるものの、その規制やルールがより明確となるのです。
これにより、従来詐欺コインと言われるプロジェクトがICOでは多々ありましたが、その詐欺コインである可能性がぐっと下がるのが特徴でもあります。
リターン
STOとICOでは期待できるリターンの構造も異なっています。
例えばICOによるユーティリティートークンであれば、単純な値上がり益の他、 特定のコミュニティにおける会員権が付与されたり、特定のサービスにおいて割引が適用されるなどといったリターンがあります。
一方、STOによるセキュリティトークンであれば、 単純な値上がり益の他、発行体となる企業から出される利益の配当を受けたり、そのトークンから生み出される金利などをリターンとして受け取る事が可能となります。
IEOとSTOの違い
投資契約とは、出資者と企業が資金の使い道や利益を創出した際の分配方法などを予め決めておくことを指します。STOとIEO(Initial Exchange Offering)の大きな違いは、 投資契約の有無です。
IEOで販売されるトークンは消費を目的としているため投資契約の効力がありません。一方、将来の利益を約束するような宣伝が行われているトークンはIEOであっても、STOとしてみなされる可能性が高いです。
2019年は海外の取引所を中心にIEOを推す動きが広がり、現状では市場の注目度としてはIEOの方が高いと言えます。
STOのメリット
安全に取引をすることができる
STOでは各国の金融商品取引法に基づいた形でトークンが発行されるので、投資家は定められた規制にクリアしたトークンにのみ投資をおこなえるメリットが生まれます。
さらにセキュリティトークンであれば有価証券の取引などをブロックチェーン上に記録できるので、高い透明性の維持や詐欺の撲滅による投資家保護にも期待することができます。
なお、STOにより発行されるセキュリティトークンはその価値が企業の利益や資産などに裏付けられたものが多いので、よりトークンの価値を算定しやすくなるというメリットもあると考えられます。
つまり信頼があるということです。ICOは、多くの人々が詐欺に遭い、さらに多くのプロジェクトが約束したことを実現できず、ほとんどの投資家は役に立たないトークンに固執しています。
対照的に、STOはすべての規制に従い、ブロックチェーンと暗号通貨がある程度の信頼性を担保することができます。
24時間稼働
STOによってセキュリティトークンを流通させる事で、証券取引を24時間稼働させる事も可能です。
例えば、東京証券取引所にておこなわれている株式の取引時間は平日の9時〜15時までとなっているため(11時30分〜12時30分は昼休み)、取引可能な時間が限られていました。
しかし、それをセキュリティトークンに代替する事で、既存の仮想通貨の取引と同じように24時間365日売買できるようになる可能性があるのです。
また、 スマートコントラクトを用いれば証券の小口化や配当の支払いを自動化させる事も出来るので、大幅なコスト削減が見込める他、不動産などの流動性の低い資産の取引が活性化する可能性もあります。更に、国境や地域の規制は、セキュリティトークンを使えば制限されることはありません。
セキュリティトークンとSTOにより、企業は借金、株式、または貢献者の役割の新しい組み合わせで新しい利害関係者のセットを作成できるようにすることです。
そのため、セキュリティトークンは一般にICOよりも優れていると考えられています。ユーティリティトークン販売を取り巻く基本的な欠陥に対処し、従来の証券を改善する可能性を持っています。
あるサービスにアクセスするためのトークンとして使える場合がこれに該当します。 さらに分かりやすい例としては、「分散型のクラウドストレージ」のプロジェクトがICOをしたとします。トークンを購入した場合、ユーザーとしてこのクラウドストレージにアクセスできる権利が付与されるケースなどです。
ユーティリティトークンの場合は、監査報告は必要とせず、有用性や利便性の高いトークンです。
STOのデメリット
トークン発行のハードルが高い
STOでは各国の金融商品取引法に準拠したトークンを発行する必要があるので、投資家にとっての安全性を高められるメリットがある反面、企業側はトークンを発行して資金 調達をおこなうハードルが上がってしまうデメリットもあります。
比較的自由に資金調達をおこなえた従来のICOと比べると、STOではその自由度が相対的に低下し、コスト も増加してしまうでしょう。
さらに、セキュリティートークンを投資家へ販売する際には標準のKYCや反社チェックなどの確認も必要となる為、企業がSTOをおこなう為にはトークンの設計・発行に関す る高度な技術的アプローチも求められるようになります。
導入の難しさ
更に、セキュリティートークンを発行しようとした場合、プロ(法律家)に依頼する必要があります。
しかしそのプロとはいえブロックチェーンに詳しいとは限らないので、そういった人材を見つけなければいけません。
投資できる参加者が限定的
STOは投資できる参加者がICOと比べて限定的である為、一般投資家がトークンを購入する為のハードルが高くなってしまう点もデメリットとなります。ICOではどのような投資家であっても参加することができます。ウェブでの参加が可能なので、理論上ネットが繋がるあらゆる場所からでも参加することができるため、今後価格が上昇しそうなICO銘柄を購入することができる可能性があります。
しかし、STOに参加するにはプロの投資家である特定投資家などが対象となるため、一般の投資家が簡単に参加することはできません。
よって、STOによって発行された セキュリティトークンの取引は、既存の仮想通貨取引所で売買されているようなトークンと比較して流動性が下がり、その売買範囲が限定的となってしまうのではないかといった見方も出来ます。
セキュリティトークン発行の際に
・証券発行者
・投資家
・法定代理人
・開発者
という4種のプレイヤーが必要となります。ICOの場合はユーティリティトークンであることが多く法廷遵守する必要がなかったので、法定代理人が必要ではありませんでしたが、セキュリティトークンの場合はそうはいきません。
そこで問題になるのはこの4種のプレイヤーをマッチングさせることです。
開発者だけでは、各国の法令遵守に対応できないし、法定代理人だけではトークン作成ができない、証券発行者も開発者不足でトークン作成できる開発者を見つけるのが難しいという問題を抱えています。
STOの市場
ICOのグラフ
2017年は空前の盛り上がりを経験したICOですが、各国で明確な規制の整備が整わないままトークンの売買がおこなわれていた事もあり、詐欺的プロジェクトや投機的需要による価格の乱高下などが目立ちました。
その結果、2018年は大幅にトークンの価格が下落してしまうようなプロジェクトが相次ぎ、ICOトークンを購入した投資家が不当な損失を被ってしまう事例が多発してしまったのです。
STOのグラフ
世界中で、セキュリティトークンの提供件数は、2019年の第1四半期に130%を超える驚異的な急増を記録しました。
これは、規制当局から証券基準への準拠を確保する圧力が高まり、公開トークンの提供を開始することが非常に困難になったためです。さらに、セキュリティトークンを提供するサービスを提供する企業が急増しており、より多くの企業がSTOを立ち上がる可能性があることが示唆されます。
ICOが活発になった後に新たに誕生したSTOですが、2018年5月以降は右肩上がりでそのプロジェクトの数が増加していきました。
STOではICOで問題視されていた「各国にお ける規制の問題」や「詐欺プロジェクトの乱立」といった課題を克服出来る可能性があるため、 世界的にもICOからSTOへとシフトする動きが加速し、その市場が急成長するようになったのです。
STOはどこで購入するのか
現状STOを購入できる取引所の整備は主に海外で進められており、そのプレイヤーはフィンテック企業や既存の仮想通貨取引所、そして証券業を営む証券取引所などと様々です。
現状、日本国内ではまだSTOが購入できる取引所はありません。(2019年4月時点)
さらに各国の規制の問題や特定投資家(プロの投資家)向けである点など、まだ日本の一般投資家がSTOを購入する事は難しいといえるでしょう。しかし、海外ではSTOを取り扱っている取引所も存在します。
海外でSTOのセキュリティトークンが取引可能な取引所の事例を紹介していきます。
STOが購入可能な取引所
Templum
Templum Templumは、セキュリティトークンが売買できる取引プラットフォームであり、企業は同プラットフォームを利用すればSTOによる資金調達を行う事が可能とされています。
このTemplumは米国を拠点とするフィンテック企業であり、セキュリティトークンの取り扱いに必要とされている「代替取引(ATS)」のライセンスを既に取得済みです。
同取引所で実際に投資をおこなえる投資家は「機関投資家」と「個人投資家」に分けられており、個人投資家の場合は特定投資家(プロの投資家)と認定されればSTOに参加できるとされています。
また、Templumは2018年4月に日本の大手金融機関であるSBIホールディングスから戦略的投資を受けた事も発表しており、今後の新たな取引プラットフォームの発展に期待されています。
Coinbase(コインベース)
米国の大手仮想通貨取引所であるCoinbase(コインベース)もセキュリティトークンが売買可能な取引所の1つです。
Coinbaseは2018年7月、SECと米金融業規制機構(FINRA)によって同社が持つ「ブローカーディーラー業・投資顧問業・代替取引業」に関する3つのライセンスの承認を受けました。
現在同取引ではまだセキュリティトークンの取り扱いはおこなわれていませんが、今後は規制当局による監視の下、Coinbaseでセキュリティトークンが流通していく事が予想できます。
STOのロードマップ
最初のセキュリティトークンの提供は、2017年4月10日にブロックチェーンキャピタル(BCAP)によって開始されました。STOは1日で10,000,000ドルを調達しました。
以来、STOは2018年から2019年まで今日まで勢いを増し続けています。
最新情報
すでに日本の金融企業である「SBIホールディングス」がSTOを予定していることを発表しています。
STOのまとめ
STOとは、有価証券と同水準の法規制が適用されて発行される「セキュリティトークン」を用いた資金調達方法です。
STOは従来のICOとは異なり金融商品取引法に準拠される 為、安全かつ厳格に資金調達をすることができます。
今後日本でもICOトークンへの金融商品取引法の適用が明確化される為、一層厳格なルール整備が進められる見通しとなっています。
まだまだ規制面やなどで課題も多く残るSTOですが、今後セキュリティトークンをベースとしたSTOによる資金調達が主流となれば、既存の証券システムの代替えとなる新しい基盤が生まれる期待が高まります。
しかし、STOを日本で実施する為には様々な規制の枠組みを見直す必要もあり、そのプロセスは容易ではないでしょう。 今後のSTOの発展に注目していきたいです。
この記事を書いた人
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