エルサルバドルはビットコインを法定通貨としたことで、一躍世界の注目を浴びました。ビットコインなどの暗号資産のリスクを懸念する声もありましたが、現時点ではエルサルバドルの経済状況は回復したのでしょうか?この記事では、エルサルバドルがビットコインを法定通貨にした経緯と理由を解説します。
その上で、エルサルバドルの現時点での状況や今後の展望について解説したいと思います。
エルサルバドルがBTCを法定通貨に採用
2021年6月に世界に衝撃を与えるニュースが発表されました。エルサルバドルのブケレ大統領が、アメリカで行われたビットコインカンファレンスで「自国の法定通貨をビットコインにする」と発言したからです。
数日後にエルサルバドルの国会では法案が可決され、世界で最初に暗号資産を自国の法定通貨とした国としてエルサルバドルが注目を浴びました。
国内での使用はもちろん納税、またドルとの交換が可能となり、またビットコインの売却によって得られた利益は非課税という法案です。
エルサルバドルは中米の人口600万人程度の小さな国ではありますが、暗号資産界隈ではこのニュースは好意的に受け止められました。
エルサルバドルは仮想通貨ウォレットアプリCHIVO(チボ)を用意し、DLした国民1人に月30ドルを配布するなどし、利用者を増やしました。ただしアクセスができない、データの不備で資金が消えるなどのトラブルも相次いでしまうなど、デジタルウォレット運用の難しさも問題となりました。
エルサルバドルでBTCが法定通貨となった経緯
どうしてエルサルバドルは、BTCを法定通貨にしたのでしょうか。
そもそも暗号資産相場は安定とはかけ離れており、暴落リスクもあります。また、世界的な金融システムとの齟齬も認められており、世界中で法定通貨として暗号資産を採用した国はまだない状態でした。
しかし、エルサルバドルがBTCを法定通貨とする発表をした後には、中南米の国が自国でも暗号資産を法定通貨にという考えを発表し始めています。
ここからは、エルサルバドルがBTCを法定通貨として採用した理由を説明します。
自国の法定通貨自体の流通が少ないため
エルサルバドルでは、コロンという独自通貨を使用していました。それ以外にもドルを使用していたものの、主な収入源が輸出であるため、自国内で使われている通貨はドルがほとんど。
コロンの流通量の少なさゆえに、自国法定通貨の為替の安定を図るのが難しい状態だったのです。自国の通貨が流通していない状況であれば中央銀行を持つ必要自体がありません。
そこで、エルサルバドルは自国の為替の安定性をビットコインで得る代わりに、積極的な金融政策自体を放棄したともいえます。
世界的に流通しており比較的安定しているビットコインを法定通貨とすることで、金融政策のコストを削減した形です。
国民の7割が銀行口座にアクセスできない
エルサルバドルは人口600万人程度の小さな国です。貧富の差も非常に激しく、なんと国民7割がインフラ不足により自身の銀行口座にアクセスできません。
口座にお金があっても引き出すことができないのです。
この問題を解決するためにも、BTCが注目されました。
BTCはスマホやPCでウォレットにアクセスし、使用できます。つまり近くにATMがなくても、お金のやり取りが自由にできる環境を構築できると考えたのです。
他の中南米の国がBTCの法定通貨採用を検討し始めたのも、同じ理由があるといわれています。
ビットコインによる外貨獲得の狙い
エルサルバドルは収入の多くを輸出に頼っており、しかも2017年より貿易赤字が続いている状態です。
経済状況を打破するために、ビットコインのキャピタルゲインへの税金を廃止しました。
これにより、外国の投資家を自国へ誘致したり、マイニングする工場を自国へ誘致する狙いがあります。
つまり、ビットコインを法定通貨にすることで外貨を獲得する狙いもあるのです。
人・金・物の誘致も促進できるビットコインの法定通貨採用は一定評価を集め、他の国もエルサルバドルの動向を見て、自国にも採用しようとする動きが生まれました。
エルサルバドルの現在の金融状況
エルサルバドルがビットコインを法定通貨としてから、2ヶ月後にビットコインが大暴落を起こしました。
エルサルバドルがビットコインを大量に購入してから25%値下がり、この際にもエルサルバドルはビットコインを追加購入していますが、価格自体は回復していません。
一時はビットコインATMに多くの国民が詰めかけ、BTCをドルへ換金する光景も見られました。
この暴落で国民はビットコインへの信頼を失ってしまい、再度ドルを保有した現金取引に戻ってしまっているようです。
BTCを法定通貨にしたエルサルバドルの今後は?
BTCを法定通貨としたエルサルバドルでは、まだ運用を開始した具体的な効果は得られていません。
しかし、エルサルバドル政府自体は、ビットコインを通貨として今後も活用する姿勢を貫くようです。
エルサルバドルは今後もビットコインを推進し、ビットコインの相場が回復して安定すれば自国資産が増えることになります。
また、当初失敗してしまったデジタルウォレットの政策整備が進めば、国民の利用率が増え、ビットコインの利便性の恩恵を享受できる状態になるでしょう。
エルサルバドルの金融状況はビットコインの市場にも大きく関係があります。現時点ではビットコインは決済手段としてはまだ流通していませんが、今後より多くの店舗などでビットコインでの購入が可能になるなどすれば、実需が高まり価格が上昇する可能性はあります。
またスケーラビリティ問題、つまりユーザーが多すぎてネットワークが混乱する問題を解決する必要もあるでしょう。
取引速度が遅く手数料が高い点が解決できれば、よりビットコインが使われるようになる可能性はあります。
ビットコインは2011年から価格が上昇し始め2017〜2018年にピークを迎えました。
現時点ではピーク時よりも価格が大きく下がっているものの、アップデートやビットコインへの理解が世界に広まることで価格上昇の期待は持てます。
これに伴いビットコインの売却益に課税されないエルサルバドルへマイナーが移動することも考えられ、エルサルバドルの経済状況が改善する可能性はあるでしょう。
まとめ
エルサルバドルは2021年9月にビットコインを法定通貨に採用しました。現時点では、デジタルウォレットの運用や国民の理解が十分に得られているとは言えない状態です。
また、ビットコインの価格暴落の影響もあり、成功ケースとして分類はできません。
ただし、ビットコインのスケーラビリティ問題がアップデートで解決され、実需が高まれば一部の経済学者が指摘したように1BTC1,000万円以上の時代が来る可能性はあります。
その際には多くのビットコインを保有するエルサルバドルの経済状況は回復し、またビットコインを扱う投資家が集まる国になる可能性もあるでしょう。
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