Kyber Network (KNC)の概要・基本情報
Kyber Network(カイバーネットワーク)はクロスチェーンを用いて「あらゆるトークンがどこでも活用できること」を目指しているプロジェクトです。
イーサリアム創設者であるVitalik Buterin(ヴィタリック・ブテリン)氏がアドバイザーを務めていることでも有名です。Vitalik氏はKyber Networkともうひとつ、OmiseGOの2つのみアドバイザーとなっています。
Kyber Networkのコア技術であるクロスチェーンとは、異なるブロックチェーン同士でトークンを交換する技術です。
現在、世界中で数千のトークン及び数十のプロトコルがあると言われていますが、発行されるトークンは特定のプロジェクト内でしか使えない場合が多いです。
Kyber Networkではプラットフォーム間でシームレスな取引を実現しトークン間の壁を無くすことを目的としています。
それ故にKyber Networkは単なる分散型取引所(DEX)の機能だけでなく、他のプロジェクトに対し、トークン交換のプラットフォームを提供している点も特徴的です。
2020年12月には取引高が4億2400万ドルとなっており、1年前の2019年12月の4100万ドルから10倍に急成長している注目のプロジェクトです。
Kyber Networkは現在以下のコンテンツを展開しています。
Kyber Swap
Kyber Developer
Kyber Reserves
Kyber Go
Kyber DAO
Kyber Swap
Kyber Networkが展開する分散型取引所(DEX)です。簡単で安全なトークン売買を一般ユーザーへ届けることを目的としており、ユーザビリティの向上を目指しています。
Kyber Developer
Kyber Networkと提携する分散型アプリケーション(dApps)に向けたコンテンツです。
Kyber Reserves
余剰トークンをリザーバーとして提供できます。リザーバーはトレードのスプレッドから利益を得ることができます。
Kyber Go
ICOのためのプラットフォームです。Kyber Swap上場トークンであればETH以外でもICOへ投資可能です。
Kyber DAO
プロトコルの分散型ガバナンスを遂行するための仕組みです。KNC保有者はネットワーク収益等のパラメータに投票することができ、さらに報酬としてリワードを得ることができます。
またKyber Networkのプラットフォーム上で使われるオリジナルトークンはKyber Network Crystal(KNC)です。
現在、資産価値が急騰していることや、KNC保有者にはインセンティブが与えられることなどから、注目を集めています。
基本情報まとめ
通貨名(通貨単位):Kyber Network(KNC)
公開日:2017年9月24日
発行上限枚数:226,000,000 KNC
公式サイト
公式ブログ
公式Twitter
White Paper
Source Code
Blokchain explorer
リアルタイムチャート
Binanceのリアルタイムチャートです。
https://www.binance.com/ja/trade/KNC_USDT?layout=pro
Kyber Network (KNC)の特徴
Kyber Networkの特徴を解説します。簡単にまとめると次のようになります。
①分散型取引所(DEX)である
②独自のリザーブシステムでDEXの課題である流動性問題を解決しようとしている
➂クロスチェーンを用いた決済API機能を有している
スマートコントラクトを利用した分散型取引所
Kyber NetworkはKyber Swapという分散型取引所(DEX)の機能を持っており、イーサリアムのスマートコントラクトをベースにしています。
スマートコントラクトとは、ブロックチェーン上で契約をプログラムに従って自動的に実行する仕組みのことで、イーサリアムなど多くの仮想通貨でスマートコントラクトが実装されています。ここで言うスマートとは「賢い」という意味ではなく「自動的に」という意味です。
スマートコントラクトは仮想通貨におけるものという認識が一般的ですが、データの改ざんや不正が行われる可能性が低いため、一般の企業同士のサービスの売買や契約などでも応用が期待されている概念です。
また、分散型取引所(DEX)とは、中央集権型の取引所とは異なり、特定の管理者が存在しない取引所です。
仮想通貨の取引所は大きく中央集権型取引所と分散型取引所に分けられます。BitFlyerやBinanceなど、企業等の管理者がいる取引所を中央集権型取引所と呼び、これに対して企業などの管理者が存在せず、ブロックチェーン上で取引を行う取引所を分散型取引所(DEX)と呼びます。
現在ほとんどの人が中央集権型の取引所を利用していますが、取引所がハッキングされてしまうと、ユーザーが預けているトークンが盗難されてしまうというリスクを抱えています。ハッキングによる盗難はこれまでも実際に起こっており、Mt.GOXやCoincheckの流出事件が有名です。
これらはユーザーの秘密鍵を取引所が管理しているために起こります。
秘密鍵とは、特定のアドレスに保管された仮想通貨を保護する役割を果たすもので、通常78桁の数値で構成されています。
一方、分散型取引所(DEX)は、自ら秘密鍵を管理して、個人間で直接取引ができるため、ハッキングのリスクがほとんどありません。個人情報も登録しないので個人情報漏洩のリスクもありません。
また、Kyber Networkはイーサリアム系DEXにもかかわらず、BTCでの取引も可能です。
ちなみに、イーサリアム系DEXはKyber Network以外にも次のようなものがあります。
AirSwap(エアースワップ)
Ox(ゼロ・エックス)
Bancor
AirSwapは、個人間でトークンの交換を実現する場所を提供するDEXを作ることを目的としたプロジェクトです。 トークンの交換のシステムを作ろうとしているKyber Networkとは目的が少し異なっています。 オフチェーンで取引のマッチングをインデクサーと呼ばれる仲介者が行い、売買するユーザー同士で直接価格交渉を行う点もKyber Networkと異なります。
0xは、AirSwap同様にDEXを作ることが目的のプロジェクトです。 そのため、0xをプラットフォームとした様々なDEXが立ち上がっているといったイメージです。 0xで作られたDEXでは、リレイヤーと呼ばれる仲介者を通じたマッチングが行われ、 オーダーブック、いわゆる板にて価格が決まります。こちらもマッチングから価格決定まではオフチェーンで行われます。
Bancorは、トークン発行者があらかじめ用意したトークンとユーザーがトークンを交換する仕組みで、他のDEXのような個人間のマッチングが無いという点が特徴です。レートの計算はオンチェーンで自動的に実行されます。
なかでもKyber Networkはユーザーの使いやすさに特に重きをおいており、一般ユーザーでも操作がわかりやすく、簡単に取引を行えます。また、売買したいユーザーのマッチングから、価格決定、決済に至るまで全てオンチェーンで実行される点が特徴です。
リザーバーによるレート決定
リザーバーとは、Kyber Networkへ「取引のために使われる分のトークン」をあらかじめリザーブというトークンの倉庫のようなものに預けてくれるプレイヤーのことです。
トークンの在庫があることにより、ユーザーがいつでも好きな時に取引が行えるようになっています。
またKyber Networkではこのリザーバーにより、取引レートが決定されています。
リザーバーは自由にスプレッドを決めることができます。自身のトークンを拠出し、個々の売買を手助けする報酬として、そのスプレッド分を手にすることができます。
リザーバー自体は複数存在しており、それぞれがスプレッドによる儲けを狙う競争関係にあるため、不当にスプレッドが吊り上がることがなく、レートが安定する仕組みです。
この仕組みは以下のステークホルダーによって実現しています。
それぞれのステークホルダーの詳細は後述します。
以前まで、リザーバーは承認制となっており、Kyber Networkと正式な提携が必要でしたが、現在は一定以上の流動性(資金)を持っていれば誰でもリザーバーになることが可能です。
リザーバーが増えれば、Kyber Networkの流動性が増すことになり、ユーザーにとってもメリットとなります。
決済API機能
APIとはApplication Programing Interfaceのことで、「あるソフトウェアのプログラム」と別の「あるソフトウェアのプログラム」間の情報をやりとりし、連携させるインターフェースのことです。
KyberNetworkにおける決済API機能とは、異なるトークン同士を自動的に対象のトークンに変換してくれるという機能となっています。
これはICOを行う上で非常に便利な機能とされています。
ICOでは、投資家があるプロジェクトのオリジナルトークンを手に入れるために、自身の持っているトークンを支払いますが、支払うトークンはたいていの場合、種類が指定されています。
例えば、イーサリアムのプラットフォームを使う場合が多いICOではETHでの支払いが求められます。しかし、BTCしか持っていない場合は一度BTCをETHに交換し、ETHを入手しなければなりません。そうなると交換の手間が発生し、手数料もかかってしまいます。
これに対しKyber Networkでは、ETH以外のトークンで支払っても、決済API機能により自動的にETHに変換し、ICOを行ったプロジェクトへ支払うことができます。
また、トークン同士の変換の際は自動的に最も良いレートが設定されます。
流動性問題の解決
流動性とは、「取引のしやすさ」を表します。
例えばあるトークンを売買したい場合、そのタイミングで売りたい人や買いたい人がおらず、取引ができない(取引が成立しづらい)状態を「流動性が低い」と表現します。
DEXにはセキュリティ上の安全性が高いというメリットがある反面、そもそもDEXやdApps自体が新しい仕組みのため、取引の数や量が少なく、流動性が低いというデメリットがあります。
Kyber Networkでは、上述のとおり、リザーバーにインセンティブを与え、リザーブ内に在庫トークンを用意しておくというリザーブの機能を持っています。この機能により流動性が低いとされるDEXでも、いつでも取引に対応できる状態を維持し、流動性を担保しようとしています。
資産価値の急騰
KNCは2020年7月のアップグレード「Katalyst(カタリスト)」により注目を集め、大幅に価値が上昇しました。Katalystは主にKNC保有者等のインセンティブを大幅に改善するものでした。
それまで日本円換算にて20円程度で推移していましたが、アップグレード公表後は10倍の200円程度まで急上昇しています。
また、直近の2021年1月にも、「Kyber3.0」という過去最大規模のアップグレードを公表しており、再度値を上げています
「Kyber3.0」の詳細は後述します。
Kyber Network(KNC)のステークホルダー
Kyber Network(KNC)のステークホルダーについて詳しく解説します。
Kyber Networkのステークホルダーは利用者であるUserの他、Reserve Contributor、Reserve manager、Kyber Network Operatorが存在します。
Reserve Contributor(リザーブコントリビューター)
リザーブにトークンを拠出するプレイヤーのことです。
リザーブコントリビューターはKyber Networkへトークンを在庫として提供し、取引が行われるとそのスプレッドを儲けとして得ています。
自分の資産を提供し、その見返りとして利益を得ているというイメージです。
1回の取引ではそれほど高い利益を得ることができませんが、Kyber Networkの認知度が高まり、ユーザーが増え、取引高が増えれば増えるほどリザーブコントリビューターにとってメリットとなります。
ちなみにKyber Networkのユーザーにはハッキングにより資産を失ってしまうリスクはありませんが、トークンを在庫として提供しているリザーブコントリビューターにはハッキングのリスクがあります。
Reserve manager(リザーブマネージャー)
リザーブを管理する主体であり、スプレッドを決定する存在です。
具体的にはスプレッドを含めた交換レートの提示及びリザーブ内にあるトークンの割合のリバランスを行います。
各リザーブマネージャーはトークン取引のスプレッドをユーザーに提示します。
その中での、ユーザーにとってベストレートを提示したリザーブのみが取引でき、利益を得られる仕組みとなっています。
つまり、リザーブマネージャーはリザーブの利益を最大化しつつ、他のリザーブより良いレートを提示して、ユーザーに選んでもらうという動きをしています。
また、取引に備えリザーブ内のトークン割合を最適化しています。
Kyber Network Operator
コントラクト全体の管理者です。
主にはトークンの追加や廃止を行っています。
現在は、Kyber Network自身がこの機能を担っていますが、将来的には分散型の管理手法にシフトしていくとされています。
まとめると、①Reserve Contributorによって在庫となるトークンが提供され、②Reserve Managerによってレートが提示され、③KyberNetwork Operatorによってレートが決定され、取引が実行されるという流れになります。
Kyber Network(KNC)の買い方・購入方法
KNCはKyber NetworkのDEXで入手可能な他、一般の取引所でも購入することができます。
ただ、残念ながら日本の取引所では購入できず、海外の取引所で購入する必要があります。
取り扱い取引所一覧
代表的な取引所は次のとおりです。
- Binance
- Coinbase Pro
- Huobi
- OKEx
- Bithumb
取引量が多いところではBinanceやHuobiなどが挙げられます。
Binanceは世界有数の大手取引所でユーザー数や月間取引高の規模が大きいです。またKNCを始め取扱通貨の種類も豊富です。Binanceは取引手数料が0.1%と非常に安いのがメリットです。Binanceの独自トークンであるBNBで取引を行うと取引手数料が最大で0.05%まで安くなります。ただし、日本居住者は利用を認められていないのでその点がデメリットです。
Huobiも大手の仮想通貨取引所で、海外の仮想通貨取引所としては珍しく日本語にも対応しています。ただ、取引の手数料は0.2%とBinanceよりも若干高くなります。
Kyber Network(KNC)の今後・将来性
Kyber Networkは、流動性を提供し続けるため、今後もアクティブユーザーによる取引の活発さや、潤沢なリザーブを確保していくことが課題となります。 そのためには、取引所のユーザビリティの向上はもちろんのこと、KNC保有者やリザーブによる流動性提供者、プロトコルを利用するdAppsなどへのインセンティブ設計やマーケティングが極めて重要となります。
トークンモデル刷新
リザーバーはKyber Network上で取引を行うと手数料を支払う必要があります。リザーバーはネットワークを利用することによってスプレッド分の利益を得る仕組みのため、ネットワーク使用料のようなイメージです。使用料はKNCで支払われますが、一部を運営費用などに当てたうえで、残りはバーンされます。
バーンとは燃やして消滅させて流通できなくすることで、流通量が減るとKNCの希少性が上がるため、KNC保有者にとってメリットが出ます。
KyberNetworkは2020年7月のアップデートでトークンモデルを刷新しました。
目的としてはKNC保有者のインセンティブ改善等がありました。
KNC所有者はKyber DAOにトークンをステークし、重要な提案やパラメータ(ステーキング報酬やバーン割合など)に投票することでプロトコル管理に参加できるようになっています。さらに投票の貢献度に応じてETHにてリワード(報酬)を得ることができます。
また、Kyber Networkを使用するdAppsは、これまでのあらかじめ設定された手数料ではなく、それぞれのユーザーのニーズやビジネスモデルに合わせて独自の手数料を設定することができるようになりました。
イーサリアムのビットコイン「Wrapped BTC」
Wrapped BTCとは、Kyber NetworkやカストディアンのBitGOなど複数のプロジェクトが提携し、「イーサリアム上でWBTCというトークンを発行し、BTCをイーサリアム上で使えるようにする」というプロジェクトです。
WBTCとはBTCと紐づけされたBTCと同じ価値を持つERC-20トークンです。つまりWBTCはカストディアンによって1WBTC=1BTCと価値が裏付けされています。
カストディアンとは保管・管理業を行っている企業で、仮想通貨ではBitGOが大手です。
Wrapped BTCではBitGOがカストディアンとなり、WBTCを発行するために、入金された全てのBTCを管理しています。1WBTCにつき、BitGOの保管庫に1BTCが保管されているため、WBTCとBTCの価値の裏付けができているという仕組みです。
BTCは現在、仮想通貨の分野では最も流動性が高い通貨ですが、活用場面が多くないというデメリットがあります。保有するか、売買するか、送金に使うしかありません。
そこで、BTCのイーサリアム上での有効利用を考えたのが、Wrapped BTCです。
BTC保有者は、自身の持っているBTCを活用する選択肢が増えることになります。例えば、近年流行している「DeFi(分散型金融)」や「レンディングプラットフォーム」が挙げられます。
レンディングプラットフォームの多くはイーサリアムベースであり、通常であればBTCをイーサリアム系のトークンに交換しなければ利用できませんでした。しかし、Wrapped BTCによりBTCを手放さずとも、自身のBTCをDeFi市場で運用することができるようになりました。
また、プロジェクト側は、BTCをイーサリアム上に接続することで、BTCの持つ強力な流動性をイーサリアムチェーン上に流すことが可能となります。
DeFi市場が拡大していく限り、WBTCの規模も拡大していくと見られています。
こういった取り組みをKyber Networkらが主導しています。
ちなみに、WBTCも国内取引所では購入できないため、Binanceなど海外の取引所を利用する必要があります。
過去最大規模のアップグレード「Kyber3.0」
Kyber Networkは2021年1月、過去最大のアップグレード「Kyber3.0」を行うと発表しました。
Kyber3.0ではKyberが流動性の提供者、ユーザー、開発者、KNC保有者へのインセンティブを提示しつつ、DeFiトレンドに適応して将来的イノベーションを促進するための進化としています。
アップグレードは「Katana」と「Kaizen」の2つのフェーズで実施され、2021年の第3四半期末までに完了する計画です。
内容としては、以下の通りです。
①多様な流動性プロトコルの開発
②KyberDAOとKNCトークンのアップグレード
①多様な流動性プロトコルの開発
Kyber Networkは新しく以下のプロトコルを開発するとしています。
Dynamic Market Protocol(DMM)(Kyber DMM)
Professional Liquidity Protocol
Derivatives Liquidity Protocol
Kyberはこれまで単一のプロトコルを提供していましたが、日々変化するDeFi市場に柔軟に対応するため、「目的に合わせた多様な流動性プロトコルのハブになる」としています。
このアップグレードにより、リザーバーなど流動性の提供側も、ユーザーやDAppsといった利用者側も柔軟な選択ができるようになり、利便性が増すとされています。
様々な流動性プロトコルの開発のひとつに「Kyber DMM」があります。
DMMを使用する流動性プールのオペレーターは、特定のトークンペアに基づいて事前に価格曲線を調整できます。
またDMMは、市場の状況に基づいて流動性提供者の手数料を自動的に調整することにより変動損失のリスクも低減するとしています。
②Kyber DAOとKNCトークンのアップグレード
Kyber DAOとKNCトークンについてもアップグレードが提案されました。
これはKyber3.0に伴う変更点への対応と、KNCトークンの有用性を追加することなどが目的です。
具体的にはKyberDAOのガバナンス力をさらに強化することや、新たな流動性プロトコル群からの手数料収入の受け取り、及びネットワークにおける資金調達の仕組みなどが整えられるとしています。
この記事を書いた人
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天然でちょっと恥ずかしがり屋な女の子。
読者の皆さんから寄せされたご意見から、 「今取引所はどうなっているのか?!」 を、徹底調査してレポートして参ります。
取引所調査員は、プロジェクトに直接問い合わせるのはもちろん、ネットの意見や口コミからレポートを作成しております。中立な立場を保つため、双方の事実・意見をまとめています。