今年1月大手取引所のCoincheckがハッキングの被害に遭い約580億円のNEMが流出する事件がありました。
この流出事件によりCoinchekは被害者に対して日本円で補償する事態になりました。
このように実際に取引所から暗号資産に換えて金銭の補償を受けた場合にどのようなことが起こるのでしょうか?
CoincheckのNEM流出についておさらい
補償方法 : NEMの保有者全員に、日本円でコインチェックウォレットに返金いたします。
算出方法 : NEMの取扱高が国内外含め最も多いテックビューロ株式会社の運営する暗号資産取引所ZaifのXEM/JPY (NEM/JPY)を参考にし、出来高の加重平均を使って価格を算出いたします。
引用元:Coincheck
不正に送金された暗号資産NEMの保有者に対する補償方針について (2018年1月28日)
NEM流出事件とは今年1月暗号資産取引所のCoincheckがハッキングの被害に遭い当時レートで580億円のNEMが盗まれたという事件が起きました。
犯行は外部からのメールによってCoincheck社員のパソコンがウイルス感染し、その感染させたパソコンをからサーバー内に侵入し遠隔操作で580億円分のNEMが盗み出されたと言われています。
暗号資産の NEMに問題があったわけではなく取引所の管理体制が万全ではなかった為、盗難金額は過去最大規模の事件 になってしまいました。
補償はNEMではなく流出時点の日本円で返金
この盗難された580億円のNEMは、Coincheckが保有者一人ひとりに全額流出時点の日本円レートで返金がなされました。
全額補償を行ったCoincheckには一定の評価はできるものの、補償内容が流出当時レートの日本円なので 同じ分のNEMを買うことができなかったり、強制的に課税の対象になってしまうため暗号資産で補償を求める声も強く上がりました。
さらに詳しい記事はこちら↓
https://coin-otaku.com/topic/11599?id=3947
NEM流出によって国税庁から暗号資産に関する新たな回答
したがって、ご質問の補償金は、非課税となる損害賠償金には該当せず、雑所得として課税の対象となります。
なお、補償金の計算の基礎となった1単位当たりの暗号資産の価額がもともとの取得単価よりも低額である場合には、雑所得の金額の計算上、損失が生じることになりますので、その場合には、その損失を他の雑所得の金額と通算することができます
引用元:国税庁
No.1525 暗号資産交換業者から暗号資産に代えて金銭の補償を受けた場合(2018年4月1日)
NEM流出時点ではCoincheckの全額補償は税金はかかるのかはっきりしていませんでした。
交通事故等で車が廃車になった場合の損害賠償は非課税になるので、Coincheckの補償も非課税になるのか?というNEM保有者の多くの人が気になっていたと思います。
そうした中、国税庁が新たな解釈を発表し、 NEM流出分の補償は非課税とは認められず、NEMを買った時から利益が出た分について課税の対象となるとする回答がなされました 。
つまり取引所で暗号資産を日本円に換金する扱いと全く同じ税金のかかり方であり、強制的に利確させられ利益が出た分は強制的に課税の対象にさせられてしまうということです。
日本円で補償された結果利益が出た人について
補償金が暗号資産NEMの取得価額を上回る場合は、その上回る部分が課税対象となり、原則として雑所得となります。
引用元:Coincheck
暗号資産NEM保有者に対する補償金の課税関係について (2018年4月18日)
Coincheckの補償によって、NEMを買った当時の価格より流出時点の価格が高かった(利益が出た)場合は、利益の部分が課税対象となります。
Coincheckから補償を受けた利益分が強制的に課税対象になってしまうので、
長期保有を考えていたり、換金時期をもっと先に考えていたNEM保有者にとっては予定が狂ってしまい想定外の出費を余儀なくされた方もいるかと思います。
さらに暗号資産で得た利益は「雑所得」として算出され、利益が20万円を超える場合は確定申告が必要です。(主婦や学生等被扶養者の方は、33万円を超えた場合が確定申告の対象です)
この雑所得は、給与所得などの他の収入を合計した額に応じて税率が決まる総合課税なので、
給与や暗号資産の利益を含めて4000万以上の収入を得た人は、最大税率の45%がかかってしまいます。
不動産や株式等の場合は、利益額に関係なく一定税率(原則所得税15%+復興特別所得税0.315%+住民税5%)となっている為、 比べると暗号資産で儲かりすぎてしまった人はとても高い税率で税金を払わなければならないのです。
日本円で補償された結果損失した人はどうか
補償金が暗号資産NEMの取得価額を下回る場合は、その下回る部分が雑所得の計算上、損失が生じていることとなりますので、その損失を他の雑所得と通算することができます(給与所得などの他の所得と通算することはできません。)
引用元:Coincheck
暗号資産NEM保有者に対する補償金の課税関係について (2018年4月18日)
それでは逆に暗号資産を購入した価格より安い価格で日本円に換えて損した人の場合はどうなるのでしょうか?
その場合損失した金額分を雑所得の中で損益通算をすることができます。
損益通算とは、課税の対象である利益分から損した金額分控除することができます。
つまり 損した金額分を儲かった分から差し引いて課税の計算ができるという制度 です。
例
ビットコインで100万円の利益が出て、イーサリアムで50万円損してしまった場合、課税の対象は50万円にする事ができます。
100万円(BTC利益分)ー50万円(ETH損失分)=課税対象50万円(損益通算)
ただし、事業所得等で損失が出た場合は他の所得と損益通算行えますが、雑所得は雑所得内でしか損益通算を行うことができず融通が利かないという面もあります。
今後の暗号資産取引についてのまとめ
NEMの流出により流出当時レートの1NEM当たり88.549円で補償がなされました。
2018年6月時点では27円前後と流出時の約3分の1の価格で推移しており、今となってはNEM流出によって強制的に利確させられた人の方が得をしている結果になっています。
結果としてNEM流出によって得をしているという現象が起きていますが、やはり本人の意図に関係なく強制的に利確する事は正しい対応なのでしょうか?またそれを課税対象にする事にも少し疑問が残ります。
とは言え今後の暗号資産の為にも二度とこのようなハッキング等の事件が繰り返されないよう、もっと細かな法整備を進めていく必要があると思います。
これだけ 将来性がある暗号資産がさらに浸透すればより便利な世の中になる と思いますので、その為に取引所の管理体制を強化、誰もが安全に利用できるような整備を推し進めてもらいたいものです。
NEMについて詳しく解説している記事はこちらから
もっと暗号資産による税金について解説している記事はこちらから
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